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熱中症の症状とは?事業者として予防対策を徹底しましょう!

 

近年の夏の暑さは、まさに「酷暑」といえるほど厳しいものです。

そんななか、事業者としても気をつけておきたいのが熱中症。夏が近づいてくるとニュースなどで話題になりますが、そもそも熱中症とはどんな症状なのでしょうか?今回は、熱中症の症状と分類、事業者ができる熱中症予防対策についてご紹介します。

熱中症とは?症状と分類・対応方法

熱中症とは、体温の上昇と調整機能のバランスが崩れて身体に熱がたまってしまい、引き起こされるさまざまな症状の総称です。これまでは症状によって熱けいれんや熱疲労、熱射病などに分類されていましたが、現在はそれらの症状を総称して「熱中症」と呼ばれています。

 

熱中症の分類(病態と対応)

重症度

症状

対応

重症度Ⅰ度

(軽症)

・意識ははっきりしている

・手足がしびれる

・めまいや立ちくらみ

・筋肉のこむら返りがある(痛い)

冷所で安静にし、体を冷やす。経口で水分・塩分の補給。

<通常は現場で対応可能>

重症度Ⅱ度

(中等症)

・意識が何となくおかしい

・吐き気がしたり、実際に吐いたりする

・頭がガンガンと痛くなる

・体がだるい(けん怠感)

 

Ⅰ度での対応に加え、体温管理。経口での水分・塩分接種が難しい場合は点滴。

必ず誰かが付き添うようにし、症状が改善しなければ病院へ。

<医療機関での診察が必要>

重症度Ⅲ度

(重症)

・意識がない

・呼びかけに対して返事がおかしい

・体がけいれんする

・まっすぐに歩けない、走れない

・体が熱く、体温が高い

Ⅰ度、Ⅱ度の対応をしつつ、体内冷却、血管内冷却なども追加対応。呼吸、循環管理など。

 

<入院加療(場合により集中治療)が必要>

参考:環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」愛知労働局「熱中症を防ごう」

 

環境省、日本救急医学会などによる資料をまとめると、上記のように3つの重症度、それぞれの症状と対応策が挙げられています。

 

熱中症の裏には「脱水症状」が隠れています。もし、大量の発汗や、目に入るとしみるような塩分の濃い汗が出始めたら要注意の合図。この他、以下の症状もⅠ度熱中症の脱水を見つけるポイントです。事業者としても社内に周知するなど、予防対策を講じることがおすすめです。

 

・原因不明の発熱

・急激な体重減少

・尿が濃くなる

・わきの下が乾燥する

・舌が乾燥する

・手の甲の皮膚をつまんでみると、すぐに元に戻らない

・握手をすると手が冷たく感じる(脱水症状になると血液は重要な臓器に集まるため)

 

熱中症は症状が悪化すると死に至ることもある大変危険な病気です。実際に職場での作業中に熱中症で亡くなった方は、2023年では23名となっています。大切な社員の方々の健康を守るため、事業者は責任を持って予防対策を行う必要があります。

 

 

 

引用:厚生労働省|令和5年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況 (令和6年1月11日時点速報値)

 

 

WBGT値(暑さ指数)とは?

「WBGT値(暑さ指数)」とは、熱中症を予防することを目的に、アメリカで提案された指標であり、熱中症リスクを判断する基準として今や欠かせない数値です。人体と外気との熱のやり取りに着目した数値で、「湿度」「日射・放射などの熱環境」「気温」「風」の要素をもとに算出されています。

 

単位は気温と同じ摂氏(度・℃)で表記されているので間違いやすいのですが、一般的な気温とは異なります。

 

以下は身体作業強度などに応じたWBGT基準値です。

 

 

 

引用:厚生労働省|令和6年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱

 

それぞれの作業について、WGBT値が表の基準値を超えている場合、超える恐れがある場合は、次章でまとめた「事業者ができること」をもとに、対策を講じましょう。

 

熱中症を防ぐために…事業者ができること

就業中の熱中症を防ぐためには、事業者がまずできる対策を行っておくことが大変重要です。以下の10の項目について、社内で対策しましょう。

 

・WBGT値の把握と評価

現場にWBGT値数値計を置き、現場の状況を把握しましょう。もしくは環境省の熱中症予防情報サイト(https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php)で暑さ指数(WBGT)の実況と予測を行っているのでチェックしましょう。場所によっても数値が異なるため、場所ごとに把握することが大切です。

 

・WGBT値の低減など

屋根や通風・冷房設備、ミストシャワーなどで数値を低減するよう対策しましょう。散水については湿度上昇や足元の滑りやすさなどにも注意が必要です。

 

・作業時間の短縮・休憩など

WBGTの基準値を大幅に超えている場合、原則として作業は行なわないようにしましょう。管理者の指示の下、定期的に休憩を取ることが必要です。

<1時間当たりの休憩時間>

WBGT基準値から1度超え…15分以上、2度超え…30分以上、3度超え…45分以上、それ以上…作業中止が望ましい

 

・休憩場所の整備など

作業場の近くには、冷房設備のある休憩場所、または日陰などの涼しい休憩場所を確保しましょう。休憩場所では人が横になれる広さを用意します。休憩場所には氷や冷たいおしぼり、シャワーなど、また飲料水やスポーツドリンク、塩飴などを備えておくとよいでしょう。

 

・暑熱順化(熱に慣れ、環境に順応していること)

作業者が暑熱順化しているかどうかは、熱中症発生リスクに大きく影響します。対策として、7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くするようにしていきましょう。特に新規採用者などが既就業者と一緒に暑熱作業することのないよう注意が必要です。

 

・水分および塩分の接種のための整備

休憩場所には水分・塩分補給のための物品などを備えておきましょう。また、作業中も定期的に水分・塩分補給できるよう配慮が必要です。「恐らく補給しているだろう」ではなく、点検や巡視などで、確実に摂取しているかの確認、管理も徹底しましょう。

 

・服装など

透湿性・通気性の良い服装で作業を行うよう準備しましょう。今では送風機能のある作業服などもあります。社内で検討してみましょう。また、直射日光があたる作業場では、通気性の良い帽子やヘルメットに使用することです。

 

・健康診断結果に基づく対応など

以下のような疾病を持つ社員の方がいる場合、熱中症の発生に影響する恐れがあります。医師などの意見も踏まえ配慮が必要です。

<糖尿病・高血圧症・心疾患・腎不全・精神、神経関係の疾患・広範囲の皮膚疾患・感冒など・下痢など>

 

・労働衛生教育

熱中症対策のため、事業者側だけでなく、管理者・労働者も知識を持つことが大変重要です。雇い入れ時など、研修の機会を設けて労働衛生教育を行いましょう。

 

・作業場の管理

熱中症予防管理者などは、上記に挙げたWBGT値の低減対策の実施状況の確認や労働者の体調確認、暑熱順化の状況確認、適切な作業中止・作業短縮の判断、職場巡視、必要に応じて病院への搬送や救急要請などを行いましょう。

 

熱中症に関する各種情報

熱中症対策に関しては、各公的機関が情報を発信しています。ぜひ以下の情報もチェックし、事業者としての熱中症予防対策にお役立てください。

 

・厚生労働省:熱中症を防ぐために知っておきたいこと 熱中症予防のための情報・資料サイト

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/

 

・厚生労働省:熱中症関連情報

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/index.html

 

・環境省:熱中症予防情報サイト 熱中症特別警戒情報(熱中症特別警戒アラート)・熱中症警戒情報(熱中症警戒アラート)発表状況

https://www.wbgt.env.go.jp/

 

・環境省:熱中症予防情報サイト 熱中症対策関連情報

https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness.php

 

・一般財団法人日本気象協会:熱中症ゼロへ

https://www.netsuzero.jp/

最後に

事業者は、社員の健康を守るため、生産性を維持するため、法令順守などのため、熱中症予防対策は取り組むべき必須事項です。例えば、社員各自が予防できるように対策ポイントの周知徹底、涼しい休憩場所の確保、就業時の適切な服装など、できる対策をすみやかに行いましょう。

 

また、熱中症は早期発見、早期治療が功を奏します。症状に気づいたらスピーディに応急処置を行い、必要であれば医療機関に受診できるよう日頃から社内で準備をしておくことが大切です。