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こんなときは要注意!熱中症になりやすい職場状況と対策・予防法

暑い日が続くと、熱中症にかかるリスクが高まります。特に屋外など働く職場環境によっては、さらに熱中症にかかりやすくなったり重症化しやすくなったりするリスクをはらんでいます。今回は、どんな症状が出ると熱中症の疑いがあるのか、熱中症にかかりやすい職場状況と対策、予防法についてご紹介します。

いつもと違うと思ったら…熱中症を疑って

暑い職場で汗を流しながら作業中、何かいつもと違う気がする…?そんなときは、適当に放置しておくことなく、どんな症状なのかきちんと把握しましょう。以下の症状があらわれていませんか?もしかしたら熱中症かもしれません。

 

・吐き気がする、実際に吐く

・頭が痛い

・けん怠感がひどい

・呼びかけに応答しない

・ボーっとしている

・フラフラしている

・体温が高く、体が熱い

 

上記のような症状があらわれた社員がいたら、「まだまだ大丈夫…」「平気、平気…」と一人で休ませてはいけません。まずは本人や気づいた周囲の人が責任者などに状況を伝え、事業者はすぐに応急対応しましょう。専門的な知識がないと熱中症かどうか判断できないため、ただちに作業を中止し、救急要請が必要です。

 

以下の記事の「熱中症の分類(病態と対応)」の表も参考にしてみてください。

危険な状況と対策

ここでは、熱中症になりやすい環境として、建設現場(屋外)、製造現場(屋内)、その他の現場について、危険な状況とそれぞれの対策についてご紹介していきます。

<建設現場(屋外)の場合>
・直射日光が当たる
暑さ指数が高くなる危険があります。テントなどで日陰をつくったり、日陰の場所から作業を始めたり、早めの出勤や早めの退勤などで対策しましょう。難しい場合はファン付きヘルメットや作業服などグッズを使って予防対策を行います。

・照り返しが強い
地面近くの気温が激しく上昇する危険があります。日差しが強くない時間帯等に、打ち水を行い地面を冷やしましょう。

・風通しが悪い
高温多湿になる危険があります。大型ファンなどを使って気流を作り、風が流れるようにしましょう。

・重量物を運ぶ
身体に大きな負担がかかる危険があります。台車やリフターを使ったり、二人で作業したりするなど、工夫しましょう。

・休憩場所まで遠い
休憩場所まで往復するだけで時間がかかってしまいます。責任者などは、移動時間を加味した休憩時間を確保するようにしましょう。

・持ち場から離れられない
交代の社員がおらず休憩が取りづらい状態です。周囲の社員に声をかけるなどし、適切な時間に休憩をとるようにしましょう。

<製造現場(屋内)の場合>
・炉がある
炉の周辺は非常に高温になります。ファン付きヘルメットや作業服、耐熱エプロンなど予防対策グッズを使用しましょう。

・熱源がある
周辺も暑くなります。遮熱版で仕切るなど、対策を講じましょう。

・日当たりがよい
建物自体が熱くなり、冷房効果が悪化してしまいます。屋根への熱気は時間が経つと階下に降りて建物全体が熱を持ち、室内の暑さは夕方ピークに達します。窓に遮光シートを貼ったり、壁面緑化を行ったり、対策をしましょう。

<その他の現場では>
・宅配
限られた時間で宅配する必要があるため、規則的な休憩が難しい環境にあります。こまめに日陰で休憩をとるようにするなど、社員へ周知徹底しましょう。

・引っ越し
重い荷物で身体に負担がかかり、暑さ指数が低くても熱中症になるリスクをはらんでいる作業です。日陰でのこまめな休憩、台車を使うなど、身体への負担を軽減するようにしましょう。

・冷蔵・冷凍倉庫
内外の温度差によって夏バテ状態になりやすくなってしまいます。重ね着をして倉庫内に入り、出たら脱ぐなど、体温調節をするようにしましょう。

・ビルメンテナンス
ビル内は、夜間は空調設備が停止して高温多湿になりやすい状況です。通気性のよい作業帽子などグッズで対応したり、単独作業を避けたりするなどで対策しましょう。

・調理場
エアコンが効かず、体温が上昇しやすい状態です。通気性のよいコックコートの使用やグリスフィルターの清掃などで予防対策しましょう。

・ビニールハウス・山林・畜舎
暑さ指数が極めて高く、熱中症にかかるリスクをはらんでいます。できるだけ早朝に作業する、日陰で休憩をとるなどし、対策しましょう。

予防のために…注意したい3つのこと

事業者は熱中症対策として、以下のことを社員に周知徹底することが望ましいでしょう。

<前日のチェック>
・前日の飲酒は控えめにする
・睡眠はしっかりととる
・熱中症警戒アラートの確認を行う

お酒を飲み過ぎた翌日は、アルコールの利尿作用によって脱水状態になります。そのため、楽しいお酒の場だったとしても、飲み過ぎは控えるように周知しましょう。また、それに加えて睡眠時間の確保も欠かせません。特に夏の夜は寝苦しく眠りづらいかもしれませんが、適切な温度に調整してしっかり眠るようにしましょう。
その他、翌日の熱中症警戒アラートもチェックし、当日に備えましょう。熱中症警戒アラートはテレビ・ラジオ・防災無線・SNSを通じて、前日17時頃、当日5時頃に、都道府県ごとに発表されています。また、ホームページでもチェックすることが可能です。
参考:環境省|熱中症予防情報サイト|熱中症特別警戒情報(熱中症特別警戒アラート)・熱中症警戒情報(熱中症警戒アラート)

<仕事前のチェック>
・睡眠はよくとれたか
・しっかりと食事はとれているか
・体調は良好か
・二日酔いなど体調不良ではないか
・当日も熱中症警戒アラートの確認を行う

寝不足の場合、体温調整機能が低下するため、当日も改めて睡眠チェックを行いましょう。また、朝食もしっかりととれていますか?塩分・糖分・水分をしっかりととりましょう。1日3食しっかり食べれば、必要な塩分は摂取できます。ちなみに1日あたりの塩分摂取量の目標値(成人)は、男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満です。
参考:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(20年版)

そして、食事をしっかりとれるような体調が整えられているかどうかも大切です。持病のある方は忘れずに服薬もしておきましょう。二日酔いの場合、すでに脱水状態であることがほとんどです。しっかりと水分補給しましょう。おすすめは、水分に加えて糖分と電解質をとれる経口補水液です。

<仕事中のチェック>
・単独作業はできるだけ避ける
・監督者は現場パトロールを行う
・こまめに水分や塩分の補給をする
・休憩もこまめにとるように心がける

仕事中、単独作業になることもあるでしょう。できるだけ避けるとともに、作業場でどうしても単独となる場合は周りが声がけをするなど配慮が必要です。また、監督者も現場パトロールなどで積極的に声がけを行いましょう。
作業中、こまめな水分・塩分補給も欠かせません。実際にのどが渇いていなかったとしても、定期的に摂取することが望ましいです。「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」では、水分補給の目安として、スポーツ飲料や経口補水液を30分ごとにコップ1杯(200ml)程度飲むことが推奨されています。水分だけでなく、塩分も一緒に補給することがポイントです。また休憩をとることも、身体を冷やすという意味で大変重要です。

最後に

職場によっては、熱中症になりやすい状況に常にさらされている場合もあります。今回の記事でご紹介したように、予防対策できることを現場の社員へ周知し、責任者などはパトロールをして声がけを徹底するなど、対策を講じましょう。大切な社員の身を守るためにも、事業者として安全配慮が欠かせません。